2025年10月4日、那須湯本にある史跡「殺生石(せっしょうせき)」を訪れました。
ここは、かつて九尾の狐が封じられたと伝わる伝説の地。荒涼とした岩場から湯けむりが立ちのぼり、硫黄の香りが漂う風景はまるで神話の中の世界のようでした。那須温泉神社や九尾稲荷神社の御朱印も巡りながら、那須高原に残る“伝説と自然の境界”を歩きました。
那須・殺生石とは?九尾の狐伝説が息づく地
2025年10月4日、那須湯本の山あいに広がる史跡・殺生石(せっしょうせき)を訪れました。
この地は、かつて「九尾の狐(きゅうびのきつね)」が封じられたと伝わる、那須高原でも屈指のパワースポットです。
標高約1,000メートル、温泉の湯けむりが立ちのぼる荒涼(こうりょう)とした風景の中に、伝説と自然が見事に溶け込んでいました。

殺生石は、那須岳(茶臼岳)の山麓に位置する火山性の岩石で、地中から噴き出す硫化水素ガスによって、
古くは生き物が近づくと命を落とすと恐れられてきました。
そのため、人々はこの地を「命を奪う石」として畏れ敬い、「殺生石」と呼ぶようになったのです。

この地に残る最も有名な伝説が、九尾の狐と玉藻前(たまものまえ)の物語です。
昔、鳥羽上皇(とばじょうこう)の寵愛を受けた美しい女性・玉藻前は、実は人の姿に化けた九尾の狐でした。
その妖力によって上皇の命が危険にさらされましたが、陰陽師によって正体を見破られ、玉藻前は那須野ヶ原へと逃げ延びます。
その後、弓の名手・那須与一の一族に討たれ、命を落とした九尾の狐の魂が宿ったのが、この殺生石と伝えられています。
いまもこの石からは硫黄の香りが漂い、「九尾の狐が封じられた地」として、全国から多くの参拝者が訪れます。
さらに近年では、2022年に殺生石が自然に割れたというニュースが日本中で話題になりました。
「封印が解けた」「九尾の狐が再び動き出した」とSNSで拡散され、一時は「神秘的な出来事」として多くの人が現地を訪れました。
現地では、割れた部分を祀るようにしめ縄が張られ、いまも静かにその姿を見守るように整備されています。
このように、殺生石は火山の自然現象と古代伝承が融合した特異な場所であり、単なる観光地ではなく、那須の歴史と信仰を象徴する“聖域”のような存在です。
硫黄の香り漂う湯けむり地帯を歩く
木道を歩きはじめると、鼻をくすぐるような硫黄の香りが漂ってきました。那須温泉神社の駐車場から「殺生石240m」の案内板を目印に進むと、まもなく視界が開け、白い地表と岩の転がる荒野のような風景が現れます。

足元には整備された木道が続き、まわりにはところどころから湯けむりが立ちのぼっていました。風向きによって硫黄のにおいが強くなったり弱まったりし、火山の鼓動を感じる瞬間があります。木道は緩やかにカーブしながら進み、歩くたびに温泉の蒸気が頬にかかるようでした。

途中には「湯の花採取場跡」という看板があり、古くから温泉成分を利用していた名残が残っています。ここでは、地面の裂け目から湯気があがり、湿った熱気がまとわりつくようでした。

10月上旬でも気温は低く、曇りの日には手が冷たく感じるほどでした。標高が高い那須湯本では風が強く、特に午前中は肌寒いことも多いため、軽い防風ジャケットを持っていくと安心です。
歩くほどに地熱のぬくもりと冷たい山風が入り混じり、独特の空気が漂っていました。木道の先に見えてきたのは、岩肌がむき出しになった斜面。そこにしめ縄が張られた巨大な石――これこそが伝説の殺生石です。
伝説を今に伝える「首蛇石」と芭蕉の句碑
殺生石の先を進むと、静かな小道の脇にひときわ目を引く岩があります。地元では「首蛇石(もうじゃいし)」と呼ばれ、九尾の狐の霊を鎮めるために置かれたと伝えられています。荒れた岩場の中でこの石だけが整然と祀られており、訪れる人が手を合わせて静かに頭を下げていました。

周囲には小さな地蔵や積み石が並び、訪れた人々が祈りを込めて石を重ねた跡が残っています。火山性ガスが噴き出す厳しい環境の中にも、信仰の温かさが感じられる場所です。硫黄の匂いと風の音だけが響き、時間が止まったような静けさがありました。
さらに奥には、俳聖・松尾芭蕉(まつおばしょう)が詠んだ句碑が建てられています。
「石の香や 夏草赤く 露あつし」
これは芭蕉が奥の細道の旅の途中、この那須の地を訪れた際に詠んだ句です。
硫黄の匂いを「石の香」と表現し、夏の草が赤く色づく情景とともに、熱気と生命の対比を描いた一句といわれています。
この句碑の前に立つと、かつての旅人たちが感じたであろう那須の空気を、今もそのまま味わえるようでした。文学と信仰が重なり合うこの一角は、殺生石の中でも特に心が落ち着く場所です。
九尾の狐ゆかりの神社を巡る――那須温泉神社と九尾稲荷神社
殺生石から木道を戻ると、すぐ近くに朱色の鳥居が見えてきます。ここが那須温泉神社(なすおんせんじんじゃ)です。殺生石の守護神として知られ、古くから地元の人々が湯の恵みと山の安全を祈ってきた場所です。鳥居の向こうには、樹齢を重ねた木々が立ち並び、硫黄の香りがうっすらと漂っていました。

境内に足を踏み入れると、ひんやりとした空気に包まれます。石段の上に社殿があり、旅の安全や健康を祈る参拝客が静かに手を合わせていました。殺生石の強い霊気を鎮めているとも言われ、古くから「九尾の狐を封じた神社」として信仰を集めています。
そのすぐ隣には、もう一つの小さな社――九尾稲荷神社(きゅうびいなりじんじゃ)があります。狐の石像が並び、朱塗りの鳥居をくぐると、白狐が描かれた御札やお守りが目に留まりました。ここでは、九尾の狐を象徴する特別な御朱印をいただくことができます。

墨の濃淡が美しく、狐のしっぽが炎のように広がるデザインは迫力がありました。地元の方によると、この御朱印は九尾伝説をモチーフにした特別なものだそうです。旅の記念にも、信仰の証にもなる一枚でした。
九尾の狐が描かれた御朱印をいただいたあとは、旅の記念にぴったりな狐モチーフの御朱印帳を探してみるのもおすすめです。那須の伝説にちなんだデザインが多く、持ち歩くだけで旅の記憶がよみがえります。
🦊 狐デザイン御朱印帳 特集(楽天)
旅の記念や開運アイテムとして、自分だけの狐御朱印帳を持って巡るのも素敵です。
アクセス・所要時間・周辺スポット案内
殺生石は那須湯本温泉エリアの中心に位置し、車でも公共交通でもアクセスしやすい場所にあります。那須ICから県道17号線を北へ約25分ほど走ると、那須温泉神社の鳥居が見えてきます。神社の隣に無料駐車場があり、ここから木道を歩いて約10分ほどで殺生石に到着します。

遊歩道は木道が中心で歩きやすく、往復の所要時間はおよそ30分ほど。足元は整備されていますが、雨の翌日などは滑りやすいため、スニーカーやトレッキングシューズをおすすめします。硫黄ガスが強い日には一部で立ち入り制限がかかることもあり、現地案内板の注意書きを必ず確認しましょう。
ペットの同伴も可能ですが、ガスが発生しているエリアでは無理をせず、抱っこや短時間の滞在を心がけると安心です。
訪れるなら午前中か夕方前の時間帯がベスト。午前は霧と湯けむりが幻想的に立ちのぼり、午後は山の影が長く伸びて岩肌の陰影が美しく映えます。10月は紅葉が始まり、11月上旬には周囲の木々が鮮やかな赤や黄に染まります。
殺生石を訪れた後は、すぐ近くの那須温泉神社や那須高原ビジターセンターに立ち寄るのがおすすめです。神社で参拝を済ませた後、ビジターセンターでは那須火山帯の成り立ちや生態系を学ぶ展示が見られます。また、車で10分ほど行けば那須ロープウェイがあり、山頂から茶臼岳や関東平野を一望できます。
歩き疲れたあとは、湯の花の香り漂う那須湯本温泉の宿で一泊するのも贅沢です。源泉かけ流しの温泉旅館や、眺望の良い露天風呂付きの宿が多く、静かな夜に伝説の余韻を感じることができます。
ふるさと納税でお得に那須塩原観光!
那須の雄大な自然と伝説を味わえる殺生石。アクセスの良さに加え、周囲には見どころも多く、日帰りでも一泊でも満足度の高い観光スポットです。静かに湯けむりの立つ岩場に立つと、九尾の狐の息づかいが今も聞こえてくるようでした。

